ミッションコンプリート
時間が経過し勝負の午後。目標まであと50cmの状況で再び河口へと向かう。するとどうだろう、朝のマヅメには貸し切りだったこのポイントも、僅か数時間の間に50人近い釣り人が押し寄せているではないか。そのほとんどがコノシロの“泳がせ”で、青物やスズキをねらっているわけだが、泳がせとなると間隔を取る必要もあるので、一等地が空いていても積極的には入っていけない。河口付近では再びコノシロが追われて水面が沸騰しているのが遠目にも確認できたが、そこにルアーマンが入る余地はなさそうである。だが、タイミングとしてはこれからが最も下げ潮の効く時間帯であり、徐々に川幅も狭まってくる。現在河口に溜まっているコノシロも遊泳するコースが狭まると、間違いなく帯状のコロニーを形成してこちらに伸びてくるはずである。その来るべきタイミングをねらって、僕らはやや上流に立ち位置を確保することにした。
この読みは見事に的中し、コノシロの群れは徐々に帯状に伸びてきた。少し時間を要したが、確実に魚は上流側のショアラインに寄り始め、いよいよねらえる状況が整った。すでに時間は17時を過ぎていたが、残り50㎝のノルマを達成したいという思いがモチベーションとなっており、濱本さんも僕も疲労を感じずに投げ続けていたように思う。
結局、10m越えを果たした最後の魚は、日没寸前に釣れた74㎝のシーバスだった。実釣時間は約12時間にも及んだわけだが、これだけの爆釣劇の中でも一本の価値を見出すことができるのは、10mという高いハードルが存在していたからではないだろうか?
それを達成したことによる充実感や感動、しいては打ち上げで胃に収まる料理には目に見えないスパイスが隠されており、会話も一層弾む。終わってみれば今回の取材はとにかく楽しかったのだが、取材を終えれば明日は完全にプライベートな釣りである。僕も濱本さんも考えることは同じで、取材は終えたというのに、明日の朝はまた再びあの釣りを味わいたいという思いに占拠されているものだから、まったくもって救いようのない釣り人である。
結局、翌日の朝からまた2人で河口へ足を運び、今度は青物も視野に入れてロッドを振っている。川では普段は到底投げることのない大きさの、ビッグペンシルやポッパーをぶら下げて、「出た!」とか「バレた!」とか言いながら。
このプライベートな時間で、濱本さんは密かにねらっていたブリをショアからキャッチし、スチール撮影用のシーバスも手中に収めた。一方の僕はブリに振り回されながらも、74、85、89cmと順調にサイズを伸ばし、最終的に96cmまでのシーバスを追加することができた。これも結局はロッドを振らないと得られない釣果であり、魚と出会うにはとにかく時間を見つけて、フィールドへと足を運ぶことが大切だ。
まあ、魚のコンディションや取材の成功はもちろんだが、僕としては一番嬉しいのは、この数時間の素晴らしい経験を、濱本さんや宇津木さん、雨の中カメラを回し続けてくれたクリボーと共通の記憶として脳に刻むことができたということなのだが(笑)。
今回の爆釣劇は追ってDVDで発売される予定。一喜一憂する2人のプロスタッフが起こした奇跡をぜひご覧下さい!
ランカークラブの展望
ランカーを釣りたいという欲は、誰にもあるもの。ただ、その“ランカー”に明確な定義は存在しない。一般的には80cmオーバーと考えられるが、ランカーはレコードとは違うので、ひとそれぞれが納得するメモリアルフィッシュはランカーと呼んでも構わないだろう…。これまで、多くの経験を積み重ねたエキスパートの2人が、今後どんな“ランカー”を見せてくれるのか、今後に期待しよう!そして、ランカーを夢見る多くの読者に何かしらの道標となれば、幸いである。